あなたは寄席に出かけたことがありますか。
落語の面白さを体験されたことがありますか。
とても面白い世界なのですが、現実の日常生活との橋渡しがないために、
自分とは別の世界、として遠ざかってしまいそうなところにある落語。
少しなにかのきっかけがあったら、ちょっと覗いてみてください。
日常と一線を隔しているスタイルは、そこに生きている世界があるということ、
寄席は、お母さんにも、幼児教育としても、
日本人が失いそうになっている世界のエンタテイメントの種がいっぱい詰まっています。
落語の人気
似たような世界に、相撲や能の、格式としての奥深さがあるかも知れません。
日頃のくらしとの接点が少ないので、
過去の芸能として置き去りにされがちな世界かも知れませんが、
入り込むととても魅力があります。
非日常的だからこそ、日常的に安易に届かない、
芸事のルールや奥深さや人情の世界があって、ひとつの世界に浸ることができます。
風俗や文芸のスタイルは変わっていきますが、
落語には完成された形式美の世界があります。
マスコミでも、いつか、どこかで、取り上げられて、人気が続いている現象もあります。
新宿末広亭を舞台にした「タイガー&ドラゴン」(TBS系、主演長瀬智也、岡田准)、
映画では、上方落語の世界を描いた「寝ずの番」(監督:津川雅彦、主演:木村佳乃、中井貴一)「しゃべれどもしゃべれども」(主演:国分太一)、
「やじきた道中てれすこ」(小泉今日子、柄本明、中村勘三郎)、
立川志の輔の新作落語を原作にした「歓喜の歌」(小林薫、安田成美)、
そして、NHKの朝の連続テレビ小説「ちりとてちん」(主演:貴地谷しほり)と、
落語ブームを持続させてきたマスコミや映画界の仕掛けもありました。
しかし、落語はブームではありません。
日本の伝統芸能としての文化の格式であり、また、噺家の生き様のすごさでもあるのです。
「ちりとてちん」のDVDは、ボックス1、2、それぞれ1万5千セット以上が売れる好調ぶり。
舞台となった福井県は、女性落語家を全国から集めた大会を開き、
女性落語をテーマに町おこしをしています。
噺家とお客
落語には名師匠が作った古典落語や、新作落語がありますが、形式と自由、
格式と大衆、具象と抽象といった、現代人の知的満足を誘う要素が詰まっています。
また、落語界には、徹底した子弟関係、それは、体験の共有でしか伝授できない、
人間、生き方、思想、きびしさ、笑い、などの世界でもあります。
だから、寄席に足を運ばないと体感できない部分もあるのです。
落語は、寄席の、高座に居る噺家と、客席に居るお客さまの、
リアルな関係の緊張でもあり、共感でもあります。
落語には形式や脚本がありますが、
噺家と聴衆がいっしょに呼吸をしている優れたライブなのです。
だから、多くの場合、寄席の広告や案内には、噺家の演題は書かれていません。
噺家が、お客様を前にして、お客さまの好みや雰囲気を読みとって、
その場で、ネタを決めるからです。
本題に入る前のマクラで、今日のお客さま向けのネタを選ぶのです。
いわば、文芸のライブ、シナリオや台本はあっても、噺家と客席がリアルタイムで、
生きている関係にあることが、芸の前提になっています。
落語は生きざま
落語のネタは、江戸時代の町民から、現代の電車の中の若ものの行動まで、
市井の生活や人生の悲喜こもごもですが、落語の面白いところは、
リアリティではなく、浮世のありようを、抉り出している文芸にあります。
表現形式もシンプルで、高座で、紫の座布団に、噺家が正座しているだけ、
小道具といえば、せいぜい、扇子と手拭だけ、それですべてを表現します。
扇子ひとつで、「よぉ、旦那」と路上で呼びかけもするが、
「おっとっとっと」とお猪口でお酒をすするしぐさも演技します。
抽象絵画のように、ムダを殺ぎ落とした、シュールで粋な演技が落語にはあります。
いまでは、東京にあった寄席も8軒から4軒に減りました。
それでも、噺家はブームや流行におぼれず、懸命に精進して芸を磨いています。
古典や新作もありますが、自分の思いや生きざまと、
寄席というシンプルな形式でしか表現できない芸をひたすら、
追及し続けている姿はスポーツにしろ、芸術にしろ同じです。
だから、時代を超えて、引き継がれ、寄席に出かける人たちに、感動を提供する、
存在感を得ることができるのでしょう。
学問のしおり
国語
「落語には台本はあるのですか」
伝承していくために、脚本はありますが、演劇の戯曲と同じで、噺家や時代によって、
どんどん変わっていきます。古典落語が新しいといわれる理由のひとつです。
算数
「噺家さんはいま何人くらい活躍しているのですか」
いま、東京と、上方を合わせて噺家は650人、増え続けていますが、
寄席やホールから声がかかるのは、約200人、1/3といわれています。
でも子供たちや若い人たちの候補生もたくさんいますよ。
理科
「笑いは健康や脳のために良いといわれていますね」
なんと、笑いをアッハという単位で測定する機械を関西大の木村教授のチームが
開発しました。横隔膜や腹筋の微弱な電気も測定できるので、
本当に面白いのか、愛想笑いかも見抜けるといいます。
社会
「お笑いと落語とはちがうのですか」
面白いものは面白い、ムリに区別しなくてもいいと思います。
ただ、落語は、制約されたルールや格式があるからこそ、自由が楽しめる点で、
相撲や能や俳句に似ているのかも知れませんね。

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