お正月には書初めをしますね。いま書道教室に子供たちが戻ってきているようです。
「書」は、子供たちに学ばせたい、日本独特の幼児教育で、
日本語や日本文化に通じる点でもすぐれています。
「書」は学問の中でも、「書道」として、武道や剣道などと同じ、精神と形がある、
人の生き方としての「道」なのです。
「書」は人を表します。
「書」を見れば、その人の考え方や性格までわかるような気がします。
和の心の道
書は、畳の上に姿勢を正して、真っ白い半紙を前に、毛筆を揃え、
墨を磨ることから始めます。
白と黒のシンプルな道具や、墨を丁寧に磨っていく、墨の香りを感じながらの、
この「間」が、心を落ち着かせ、精神を統一させてくれます。
日本の武道などの形式や心構えに似ています。書は、日本の文字のデザインです。
文字に託された意味と、書く人の心の持ち方が、美しく重なったときに、いい姿になります。
書には、武道や剣道のように、基本の美しい形があります。
払い、折れ、点、曲がり、そり、はね、など、力をたわめ、きれいに流れる要所があり、
力強さ、バランス、間などの造形があります。
書道は子供たちが文字に興味を持つ頃に始めるのがいいようです。
ゲームのボタンひとつで、パソコンのクリックひとつで、
瞬時に出て消えるデジタルの文字からは、文字の姿や心や意味は伝わりません。
ひとつひとつていねいに、毛筆で書くことに意義があります。
書は背筋を伸ばして、一気に書くものです。やり直しはききません。
ある意味、全身を使って、集中力で書きます。こんなところもスポーツに似ています。
書は人を表す
書がおもしろいのは、基本をしっかり身につけた上で、自分なりの創造的な個性や、
感性を表現できることです。あどけない女の子でも、堂々とした芯の強さや、
豪放大胆さを見せてくれることもあります。
凛とした男の子でも、その子らしい凛々しさや、やさしい反面が見えることもあります。
書には、その人の性格や内面が反映されています。
書のリズムは、音楽に基本があるように、上達する上で踏まえたい基本があります。
しっかり基本を踏まえてから、自分なりの崩し方や、絵としての造形を楽しんで下さい。
おかげさん
崩した絵のような書で、声が聞こえるように、人の心に語りかける、相田みつをさん。
どこかで出会っているか、既に大好きになっている親御さんたちも多いでしょう。
相田みつをさんの書には、子供たちに伝えたい言葉がいっぱいあります。
「体験して はじめて 身につくんだなあ」
「むりをしないで なまけない わたしは弱い人間だから」
「うばい合うと 足らないけど わけ合うと あまっちゃうんだなあ」
「自分の うしろ姿は 自分じゃ みえねえんだなあ」
相田みつをさんは、自分に限りなく謙虚であることが、
そのまま思想になっています。決して諭しではありません。
「うそはいわない ひとにはこびない ひとのかげぐちはいわぬ わたしにできぬことばかり」
「花は ただ咲く ただひたすらに ただになれない 人間のわたし」
「いいことは おかげさま わるいことは 身から出たさび」
「自信はなくて うぬぼれてばかり ああはずかしい はずかしい」
相田さんの著書「生きていてよかった」(ダイヤモンド社、1998年)からいただいています。
それにしても、のたくって、かすれて、アンバランスな文字、
この書のかたちがこの人の心をよく伝えています。
相田みつをさんの作品に触れていると、書家なのですが、宗教家でもあり、哲学者でもあり、作家でも画家でもあり、そしてすぐれた教育者でもあるような、
ゆたかな人間性を感じます。いや、相田さんは、
きっと「わたしはにんげん」とおっしゃるでしょうが。
伊賀上野の田園の中で
さわやかな水彩画といっしょに、 カタカナも混じって、山河や花や木の実や野菜の、
絵のような文字が散らかって
いる、榊莫山さんの作品。
ザンバラの白髪、ギョロッと大きな目、笑っている口、トレードマークの野良着、
誰でもすぐ友人にしてくれるような、温かい人柄。NHKなどでお馴染みの方も多いでしょう。
榊莫山さんの作品には、三重県の伊賀上野の田園のやさしさと、
四季の詩情にあふれています。書かれている文章にも、
「菜の花畠に入日薄れ......」の『朧月夜』など大好きな童謡がいっぱい流れています。
小さな菫などを見ながらスケッチしている莫山さんは、自然の風景の一部です。
やさしい雑木や花にめぐまれた庭の、ケヤキの木のそばに、
莫山さんがつくった2つの碑があると著作にあります。(「莫山歳時記」毎日新聞社、平成9年)
「コガラノ林ハ誰ノ林 アメンボノ池ハ誰ノ池」
「花アルトキハ花ニ酔ヒ 風アルトキハ風ニ酔フ」
莫山さんは、子供のままの書家なのでしょう。
いい書には、いろんな楽しさがいっぱい詰まっていますね。
学問のしおり
・ 国語
「書初めで書く文字はなにがいいでしょう」
好きな文字でいいですよ。人の気持ちを表し、書の基本を活かせる文字がいいですね。
「人」「気」「成」「道」「春」などいかがですか。
・ 算数
「文字には画数とか筆運びの順がありますね」
間違うと正しい形になりません。漢字を逆引きするときにも、画数や篇から入ります。
たとえば「口」は4画ではなく3画です。飛ぶいう字を正しい筆順で書けますか。
大切なきまりです。
・ 理科
「墨は何からできているのですか」
ふつう油煙墨といって、松、椿、桐などを燃やしてとった煤を膠で練り固めてつくります。
液体墨は便利ですが、学びとしては固形墨に限ります。
・ 社会
「くらしの中にも書はたくさんありますね」
おなじみの場所では神社仏閣ですね。歴史に出てくるものも近世以前は和の書、
書は日本文化を継承しています。源氏物語や家康の手紙、
読めなくても原文を覗いてみてくださいね。

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