コンセプト
歌舞伎や太鼓やお祭りの踊りなどで、
幼い子供たちが一心に演じている姿を見ると、胸が熱くなりますね。
それは、日本の伝統芸能は、日本人の体や精神の中に
ぴったりと根付いている姿を目の当たりにするからだと思うのです。
伝統芸能は、日本人の風土や農業や季節など、
さまざまなわけがあって生まれたもの。それだけ文化の多様性を味わい、
生活や心のゆたかさに必要なことです。幼児教育として、
日本の伝統芸能を伝承することは文化のゆたかさを楽しむことにつながり、
日本人としての精神的、身体的な可能性をゆたかに引き出すことにもつながります。
「伝統芸能には子供たちを育てる力がある。」
名古屋市の熱田区にある日比野中学校で、
和太鼓や踊りの部活を行っている教諭の長田さんはそう言います。
はじめは人前で話すことすら恥ずかしがった生徒たちは、
音楽や踊りを学ぶことに自分を解放する喜びを感じているといいます。
その中でも力を注いでいるのは愛知県の三河地方に伝わる花祭り。
五穀豊饒や村の安泰を願って夜通し舞う、重要文化財にもなっています。
「テーホヘ、テホヘ」の掛け声で知られた、鎌倉、室町時代から伝わる踊りを練習した
20人の生徒たちが、東栄町の花祭りに参加し、少子高齢化が進んでいる中で、
若い人たちが伝承してくれることに喜んでもらいました。
「何百年も続いている踊りにはひとつひとつに意味がある。
地元の人たちと親しくなった」と、参加した生徒の部長さんは、
流行のストリートダンスでは味わえない喜びがある、と語っています。
(朝日新聞、2007年9月15日)
小学校の「琴クラブ」
岐阜県笠松町の笠松小学校に、小学校では珍しい邦楽の「琴クラブ」があります。
40畳の和室で15面の琴を
使って、正座して、琴譜と弦を
交互に見つめて、約20名の
児童たちが練習しています。
漢数字が並ぶ難しそうな
譜面と、複雑な指の動きで
弦をつまびきながら、
「さくらさくら」や「荒城の月」の合奏に取り組んでいます。
現代音楽の中にいる大人も子供も、
邦楽の調べと自然の美しさを愛でる楽曲に、
日本人であることの心の源につながるような感動を覚えます。
江戸時代からの歌舞伎を子供たちが伝える
福島県郡山市の御舘中学校の生徒たちが、
江戸時代から伝わる柳橋歌舞伎の保存と再現に取り組んでいます。
江戸時代から始まって、何度も途絶えましたが、
地域の全戸が「柳橋歌舞伎保存会」を立上げ、復活し、
地域を知る総合学習として全生徒が参加しています。
歌舞伎は役者だけではできなくて、隈取りの化粧、三味線の音楽、
独特の身のこなしや発声法、舞台の美術など、すべてのものを学ぶ
総合的な学習の題材になります。
丸1年をかけて全員がみっちり練習した「義経千本桜」と「白浪五人男」の大作が
文化祭で披露されます。
子供たちには、自分たちが貴重な文化を受け継いでいかなければいけないという
思いや、歌舞伎に学ぶ日本の礼儀や作法も身につくことにもつながっています。
3000を超えた「伝統文化こども教室」
日本にあるさまざまな伝統文化を次の世代に残していくためには、
こころもからだも可能性に富んだ子供のうちに触れて身につけていくことが大切だと、「伝統文化こども教室」という事業が財団法人伝統文化活性化国民協会が
平成15年から始めました。日本のさまざまな伝統的な文化のうち、
子供が体験、修得することがふさわしいと思われる、
民俗芸能、工芸技術、邦楽、日本舞踊、武道、茶道、華道などのほかに、
子供の遊び、わらべ歌、昔話、地域の年中行事などが対象になっています。
小中学校を対象に教室を行う場所や参加人数など、
一定の基準のもとに行っている活動を審査の上、支援するシステムです。
初年度は1500教室、18年度は3300教室が採択され、
伝統文化への関心の深さがうかがわれます。子供たちが伝統文化を継承することは、子供たちのゆたかな感性や精神を涵養することでもあります。
伝統文化こども教室の一例をご紹介しましょう。
島根県川本町の田植えばやし保存会では小笠原近重流や田植ばやし保存会の
もとに、小学生たちが古くから伝承されている笛の持ち方、音の出し方、
指の使い方を学んで、田植ばやしを地域でのイベントで披露したり、
老人ホームの慰問などを行っています。
福島県会津若松市のおこと体験こども教室では、
小学生たちが日本の伝統楽器である「筝」の基本と奏法を学び、
低学年は「さくらさくら」「ひなまつり」「荒城の月」を演奏、
高学年は尺八とのコラボレーションを行いました。
皆様の地域や身の回りにも、伝統文化の伝承に取り組んでいる子供たちがいたら、
或いは地域に提唱して、「伝統文化こども教室」にお問合せ、
申請されてはいかがでしよう。

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