コンセプト
いまの若い人たちには縁がうすいと思いますが、
旧暦とか陰暦とかいう言葉をお聞きになったことがあるでしょうか。
日本の季節や生活のカレンダーの多くは旧暦にならっています。
「旧暦でくらす」といっても、イメージだけで実際に暮らしていただかなくてもいいのでが、昔の生活が季節とともにあったことの意味が旧暦にはよく表れています。
ファッションは季節の先取りとか、食生活で旬の初物とか、いいますね。
どこかで共通点があります。いまも残っている生活の行事のいくつかや、
農作業は、むしろ旧暦の方がぴったりしているケースの方が多いのです。
俳句の季語はいまでも旧暦にならっています。
旧暦をお母さんのイメージに置いて、生活のカレンダーを幼児教育として見てみると、
暮らしと季節の関係に意外にぴったりした発見もありそうです。
旧暦とは
現在では世界でほぼ太陽暦(グレゴリオ暦)のいまのカレンダーが使われていますが、日本では明治5年まで用いられていたカレンダーが旧暦(陰暦)です。
現在のカレンダーより、およそ1ヶ月半くらい早く季節を先取りしています。
二十四節気という、季節を表すために、1年を24等分して節目につけられた名前は、
季節とともに農業や生活の区切りを示す呼名として親しまれてきました。
私たちが感じる季節感や生活の意識はむしろ旧暦の方が合っているように思います。
春
立夏(5/6頃)の前日まで、 陰暦(以下、旧暦のこと)の 1、2、3月をいいます。 寒が明けても立春の頃は春寒とか、冴え返るとか、余寒とか 言われてまだ寒さが厳しいの ですが、梅が咲き始め、 どこかに春の兆しを感じ始めます。 啓蟄とは、3月6日頃、 冬眠していた蟻や蛇や蛙が 地中から穴を出てくることです。立春(2/4頃)から
啓蟄の雲にしたがふ一日かな 加藤楸邨
陰暦三月を弥生といいます。3月半ばともなると、
草木が生命を目覚めさせて、春らしくなってきます。
山笑ふ聴けばきこゆる雨の音 千代田葛彦
この頃降る雨を穀雨といって、
田んぼや畑の手入れが整うとともに、
柔らかな雨が降り、穀物の芽に恵みを与えます。
夏
立夏の5/6頃から
大暑の7/23頃まで、
旧暦では4月、5月、6月が
夏です。
野山に新緑が萌え始め、
風が薫るようなさわやかな
初夏を迎えます。
田んぼにきれいな青田がそろう初夏の頃、
麦が熟するときを麦秋という
美しい日本語があります。
万緑の中や吾子の歯生え初むる 中村草田男
見渡す限りの緑と幼児の生命感を詠っています。
季語「万緑」はこの句から生まれました。
夏至は6/22頃、一年中で昼が一番長い日ですが、まだ梅雨が明けきれないで、
花菖蒲や紫陽花などが似合う時期でもあります。
桃の葉を煮るや土用の子の睡り 堀口星眠
7/23頃、大暑を迎える土用がきます。夏休みに入る頃、
もくもくと白く輝く入道雲が海の上、山の上に湧きあがる様を、雲の峰といいます。
秋
まだ暑さが残る立秋の8/8頃から、旧暦では7月、8月、9月が秋です。
気象学的には9月、10月、11月が秋に当ります。
立秋の頃から、初秋になると、どことなく風や空に秋の気配が感じられてきます。
秋立つや川瀬にまじる風の音 飯田蛇笏
陽暦ではまだ8月なのですが、朝顔も蜻蛉も俳句では陰暦の秋の季語です。
秋は月、陰暦8月15日は仲秋の名月です。
盆の月、良夜など、日本の月の夜をとらえた美しい言葉があります。
あらうみや佐渡に横たふ天の川 芭蕉
冬
10、11、12月が冬です。 陽暦ではまだ紅葉の鮮やかな季節ですが、次第に日が短くなり、 日差しは弱まり、木々は落葉して 日ごとに冷たさが増してきます。 立冬を過ぎた頃、暖かい日が 春を感じさせるような日を 小春日和といいます。立冬は11/7、陰暦では
玉の如き小春日和を授かりし 松本たかし
師走の頃は12月半ばに大寒という一年で一番寒さの厳しい時期を迎えます。
しかし、春を待つ心が季節のすぐ後に隠れています。
三寒四温赤ん坊泣いて眠るのみ 岡部六弥太
陽暦のお正月を迎えます。俳句では初日、初春、初空、初雀など、
おめでたい季語は、新年として特別にくくられます。
(俳句は、合本「俳句歳時記」第3版 角川書店編)

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