コンセプト
ひととおりおしゃべりする(文字を書く)ことができれば、
俳句は幼児から高齢者まで、万人向けの手軽な文芸です。
俳句のルールはただひとつ、五・七・五を基本とすることで、
言葉を覚え始めの幼児にもできることから、文芸入門の幼児教育になります。
自然を観察したり、ものやことに心を動かせたり、
家族や人とのかかわりを大切にするなど、文芸以外にも得るところが多いといえます。
五・七・五のルールは、野球に一塁からホームベースまであるように、
サッカーはボールを手に持たないなどのように、
制約があることで、かえって楽しめるものです。
ハイクとして海外にもひろがり、日本の誇る文化になっています。
常識や通念にとらわれない子供たちの感性を伸ばす
人が感じたことや体験したことを饒舌に語るよりも、一言で伝達できれば、
言い得て妙、というように情報量が高くなりますね。
ハイクはそのような文芸で言葉を選び、圧縮し、視点や角度を変えて表現することで、
いっそう人に伝える力を増します。
いま、誰でも出来ることから俳句人口は2000万人ともいわれ、
著名な高齢者の俳人もいて、高齢者にも人気がありますが、
意外なのは小中学生など、子供たちにもすぐ取り込めることで、
子供たちは俳句づくりに非常に高い能力を発揮します。
子供たちは、大人の通念や社会の常識にとらわれない分、ものごとを新鮮に見つめ、
表現することに優れています。五・七・五の枷をかけることで、
かえって子供たちの表現能力を刺激するところから、
俳句はしばしば子供たちの右脳の開発に活用されています。
右脳は感性や直感にかかわる能力で、子供にかかわらず、大人でも、
ものごとを創造的に思考したり処理するときに求められる能力です。
近年、モーツアルトが本来の音楽の楽しみとは別に、
癒し効果や創造力を高めることに関連して取り上げられるのは、
モーツアルトの音楽には右脳に響くからだといわれています。
俳句の創作メカニズムも、満開の桜は美しいなど、
当たり前のことを当たり前に言わないで、もっと人のこころに響く表現を求めるところから、
感覚的な閃きやとらえ方にかかわってきます。
子供たちの俳句
子供たちがつくる俳句にはみずみずしく、キラッと光るすばらしさがあります。
身近な文献から子供たちの作品を拾ってみました。
(「新版 子ども俳句歳時記」監修 金子兜太、蝸牛社、1997年)
子供たちは家族など周りの人たちのことや自然をうたうことにかけては達人です。
さんかん日 うしろにかあさん いいにおい (小1)
てんてきの おじいちゃんの汗 ふいてやる (小1)
きんぎょすくい 子供になった おばあちゃん (小1)
とうさんの しごとにもってく かきごおり (小1)
なのはなが 月のでんきを つけました (小1)
えんそくで はるをいっぱい みつけたよ (小2)
あおいそら たべておおきい こいのぼり (幼稚園)
あぜみちの ばったはすぐに ばけたがる (小1)
わたしより たかいすすきを おっている (幼稚園)
くりひろい しているときも くりおちる (小1)
ヴァイオリンの鈴木鎮一さんの俳句の訓練
この幼児教育のコンテンツで取り上げたヴァイオリンの鈴木鎮一さんの著作に、
次のような一茶の俳句を約70句覚えさせることで園児の記憶力の訓練に役立て、
実際に小学校へ上がってからよく覚える子は成績がよくなった話が載っています。
(鈴木鎮一「愛に生きる」、講談社 P189)
雪とける とけると鳩の なく木かな
雪とけて 村いっぱいの 子供かな
ふきの葉に ぽんと穴あく 暑さかな
猫の子が ちょいとおさえる 木の葉かな
這え笑え 二つになるぞ けさからは
ふるさとや 餅につきこむ 春の雪
こうして訓練していると、「や」とか「かな」の意味がわかってきて、
園児たちは次のような句をつくるようになりました。(同掲書 P190)
朝起きて 手洗いばちに かたつむり
自転車や さくらの花を もちながら
夕やみの 空にキラキラ 星が出た
ダリアより やっぱり大きい おれの顔
風鈴や おとうさんの ひるねかな
雨こんこん ぼくはおもてで 遊べない
すいせんや ずんずんのびて 春がきた
すずめごが きれいな花を ながめてる
俳句をよんだり、つくったりすることが、
幼児たちの脳の力を高めているようすがよくわかりますね。
俳句には言葉の約束や自然の秘密や心の発見があって、
覚える価値があるということでしょう。

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