アホウドリ。 きょうはこの鳥といっしょに過ごしてください。
カモメに似ていますが、白い翼を広げて、海上を舞うこの鳥は絶滅に瀕していて、
人々の努力で回復をしています。
地球を壊してしまった人間は、これから地球を回復させていかなければなりません。
アホウドリを、地球を守るキーワードとして、幼児教育の引出しに加えてください。
壊すことは簡単でも、甦らせることはどんなに大変か、というドラマを、
お子様といっしょに感じてください。
囮の鳥をつくるバードカービング
木材をナイフや彫刻刀で鳥の形に削っていき、色を塗って、本物そっくりの鳥をつくる、
バードカービングという工芸をご存知ですか。
木材は、日本産では、シナ、ホオ、カツラ、ヒバなど、ほとんど年輪がなく、
柔らかくて削りやすいものが使われ、彩色は、退色しにくいアクリル絵具で塗ります。
もともとアメリカで、ガンやカモを狩猟するとき、本物に見せておびき寄せる囮として
草原に置いて使われたものですが、野鳥を剥製にしないで、
代わりに飾る目的でも普及しました。
バードウォッチングなどのブームを背景に日本でも行われるようになり、
誰でも趣味としてつくることができることから、カルチャーセンターの教室もあります。
鳥島のデコイ
デコイは、絶滅危惧種を含む希少な鳥の繁殖の促進にも用いられています。
天然記念物で絶滅の恐れがあるアホウドリは、世界でも日本の鳥島と、
尖閣諸島でしか繁殖していないといわれますが、鳥島にアホウドリを定着させるために、
海辺の岩肌に100体ほどのアホウドリのデコイを置きました。
すると一匹の雄のアホウドリが雌のデコイに求愛してくるようになりました。
アホウドリは番になると相手を変えないのですが、デコイを撤去したあとも、
番になって定着しているのが観測されています。デコイも活躍して、
約15年かけてのアホウドリ増殖事業が効を奏しました。
アホウドリの引越し作戦
今度は鳥島に産まれたアホウドリのヒナ10匹を、
約350キロ南下した小笠原諸島のむこ島に引越しする取り組みが行われました。
山階鳥類研究所、環境省、アメリカの魚類野生生物局が協力し合った、
新しい安全な繁殖地づくりをめざす、世界でも珍しい大作戦です。
せっかく定着したのになぜ? 鳥島は過去にも噴火し、
現在も噴火の危険と隣り合わせのため、絶滅から救うことになったのです。
むこ島は、かつてアホウドリが棲息していたことがあり、
気象条件も似ていることから選ばれましたが、
巣立ちから人口飼育までを行うのは世界でも初めての試みでした。
運ばれた10匹のヒナ
ヒナは白い親鳥と違って、体は真っ黒な羽毛に覆われています。
崖下の繁殖地で捕獲したヒナ10匹がヘリコプターで、むこ島に運ばれました。
デコイが置かれた、海に面した草むらに放たれたアホウドリを飼育するにも、
雑菌を避けて与える直前にエサをつくり、与えるなど関係者の気遣いがあります。
1羽当り、トビウオとイカのミンチ600グラムを平らげ、どうにか移住作戦は成功しました。
ヒナが無事巣立つまで、スタッフたちは野営して、エサを与え、見守り続けます。
ヒナは5月頃に巣立ちを迎えますが、成鳥となってむこ島を新たな故郷として認知し、
舞い戻ってきてくれて、ここで繁殖してくれて本当に成功したといえます。
地球は人間が回復する
アホウドリは白い羽根を広げると2メートルを超します。
吹きつける寒風を楽しむかのように、海上の大空を滑空します。
種を絶やすまいとする人々の努力の甲斐あって、アホウドリは2千羽ほどに回復しました。
でもなぜ、たった10匹のために、そのような大掛かりなことをするのか。
アホウドリが地球からいなくなることは、
自然を圧縮している人間からひとつの遺伝子が消えていくことになります。
アホウドリはコンピュータではつくれません。
いま、鳥類の絶滅危惧種は約140種、爬虫類約50種、
両生類約30種、無脊椎生物約130種。
地球はここまで壊れてしまっています。
回復することができるのは、もはや、地球を壊してしまった張本人である、人間の使命です。
※むこは、婿ではなく、「知」の下に「耳」を書きます

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